この記事の著者
iD-Heartコラム担当
医療情報技師、ITコーディネータ、マーケティング担当が執筆します。
専門分野: 健診システム導入支援に19年間従事、健診事業に特化した医療機関の業務フロー改善を支援。
「健診業務の担当になったけど、何から覚えればいいの…?」
「覚えることが多すぎて、ミスしないか不安…」
健診部門で新しく働き始めたスタッフさんは、今まさにそんな気持ちかもしれませんね。
健診業務とは、企業や個人が健康状態を把握するために行う健康診断・人間ドックの予約受付から、検査補助、データ管理、結果報告までの一連の業務のこと。
これらの健診業務はたしかに多岐にわたりますが、一つ一つの業務にはちゃんとコツがあります。
この記事では、健診業務の全体像を「スッキリとご理解いただく」ことを目指しています。
① お客様と直接関わる仕事(外部対応業務)
② スムーズな運営を支える仕事(内部運営業務)
③ 1日の流れ
という3つの視点から、仕事内容を一つずつ一緒に見ていきたいと思います。
AIやマニュアルが教えてくれない「よくあるミスの防ぎ方」や「現場で役立つコツ」も具体的にお伝えします。
特別な資格や経験がなくても大丈夫です。
複雑に見える健診業務を整理し、ご自身の役割を理解するための一つの「道しるべ」のようになれば、と願っています。
健診業務に対する不安が少しでも和らぎ、「これなら、できそう」と感じるためのお手伝いができれば幸いです。
ここが分かると安心!健診業務を形づくる「4つの健診の種類」
健診業務には、会社や自治体、医療保険者(健保組合など)といったさまざまな主体が関わっています。そのため、私たちが行う受付やデータ入力といった一つ一つの作業も、健診の種類によって守るべきルールや報告方法が違ってきます。
まずは、皆さんが日々接する健診が「誰の、何の目的のための健診なのか」、そして「結果をどう報告する必要があるのか」**を、この表でスッキリ整理しましょう。この違いを理解することが、ミスのない正確な業務への第一歩です。
| 種類 | 実施する人(義務) | 大切な理由(目的) | 主な報告方法 |
| 会社が義務の健診 | 企業(会社) | 働く人の安全と健康を守るため |
紙の報告書が基本
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| 医療保険者が義務の健診(特定健診) | 医療保険者(健保組合、自治体など) | 40歳以上の生活習慣病予防 |
XMLデータ
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| 地域住民の健診 | 主に自治体(市区町村) | 地域住民の健康レベルを向上させるため |
紙またはデータ(自治体指定)
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| 任意・詳細な健診(人間ドック) | 個人/会社が任意で選択 | より詳細に健康状態をチェックするため |
詳細な紙の報告書(特定健診利用時はデータも)
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関連記事:~ 始まる第4期 ~ 特定健診・特定保健指導 見直しのポイント
健診業務とは? その目的と全体像(業務分類)
健診業務は、『外部対応業務』と『内部運営業務』の大きく2つに分けられます。
本格的な解説に入る前に、まずは健診業務の全体像を見てみましょう。
一つ一つの詳細は後の章でじっくり解説するので、今は「へぇ、こんなに色々な仕事が関わっているんだな」と、全体像を眺めてください。
【外部対応業務】受診者様・企業様と直接関わる仕事
| 業務名 | 内容 |
| 契約業務 | 企業や健康保険組合などと、健診コースの内容や料金を取り決める仕事 |
| 予約管理 | 電話などで予約を受け付け、健診日時を正確に管理・調整 |
| 事前準備 | 受診者様へ、問診票や検査キットなどの大切なご案内を事前に送付 |
| 当日の受付・案内 (アテンド) |
来所された受診者様をお迎えし、書類などを確認 着替えや各検査へスムーズにご案内 |
| 検査の補助・介助 | 身体測定や採血など、医療スタッフと連携して受診者様の検査をサポート |
【内部運営業務】健診運営をスムーズに支える仕事
| 業務名 | 内容 |
| データ入力・管理 | 各検査の結果を、間違いがないよう正確に転記システムへ入力し、情報を管理 |
| 結果報告書の作成・発送 | 受診者様や企業様へお渡しする、健康状態が記された大切な報告書を作成し、発送 |
| 請求・精算業務 | 実施した健診の費用を計算し、企業様や健康保険組合へ請求 ・企業だけでなく、健康保険組合や協会けんぽ、国保といった保険者への請求業務も含まれます ・法定健診ではレセプト(診療報酬明細書)のような仕組みではなく、請求書ベースとなります。 |
| 院内・外部連携 | 院内の他部署(放射線科など)や、外部の検査会社とスムーズに連携 |
| 検査の補助・介助 | 身体測定や採血など、医療スタッフと連携して受診者様の検査をサポート |
第1章:受診者様・企業様向けの業務(お客様と直接関わる仕事)
【この章でお話しすること】
・受診者様や企業の方と接する際の基本的な業務内容について
・お客様に安心感を与え、信頼を得るための具体的なコミュニケーションのヒント
・よくあるクレームやミスを防ぐための考え方
1-1. 予約管理・事前準備:健診の第一印象を決める大切な窓口
業務内容:電話などでの予約受付、予約変更・キャンセル対応、問診票や検査キットの事前送付など。
POINT:失敗を防ぐためのヒント
電話予約では、お名前や生年月日などの聞き間違いを防ぐための「復唱確認」を必ず行いましょう。
団体の予約を一括で受ける際には、受診者様のお名前や生年月日だけでなく、受診コースの確認も必要です。
事前送付物の入れ間違いは、受診者様の不信感に繋がります。
複数人でのダブルチェックや「送付物チェックリスト」の活用が有効です。
1-2. 当日の受付・案内:受診者様の不安を和らげる「おもてなし」
業務内容:受付での本人確認、保険証や持参物のチェック、更衣室や検査室への案内(アテンド)。
POINT:受診者様の不安に寄り添う声かけ
健康診断の受診者様は日頃から医療機関にかからない方も多く、院内で不安を抱かれる方もいらっしゃいます。
「検査、少し緊張しますよね。大丈夫ですよ」といった共感の言葉が、受診者様の心を和らげます。
「次は血圧測定です。すぐに終わりますので、あちらでお待ちください」など、次に何をするか、どのくらいかかるかの見通しを伝えるだけで、受診者様は安心できます。
待ち時間が長引く際は、「お待たせして申し訳ありません」の一言で、受診者様の気持ちは大きく変わります。
1-3. 検査の補助:チームで支えるスムーズな検査
業務内容:身体測定(身長・体重など)、視力・聴力検査、採血や採尿のサポート、医師の診察補助。
POINT:自分の役割を正しく知るために
採血行為やレントゲン撮影など、資格が必要な医療行為と、資格がなくてもできる補助業務(準備、介助、ご案内など)の線引きを正しく理解しておくことが極めて重要です。
医療スタッフが検査に集中できるよう、先回りして準備を行うなど、スムーズな連携を心がけましょう。
1-4. 企業との対応:施設の売上を支える重要な業務
業務内容:法人契約の内容確認、企業担当者様との日程調整、見積書作成のサポートなど。
POINT:知っておくと安心な豆知識
企業には、従業員に年1回の定期健康診断を受けさせる「義務」があること(労働安全衛生法)を知っておくと、担当者様との会話がスムーズになります。
「なぜ病気の治療より健診のほうが高額なの?」という質問には、「健康保険が適用される治療と異なり、予防目的の健診は原則として保険適用外のためです」と説明できるようにしておきましょう。
【コラム】先輩からのワンポイントアドバイス ①
〜小さな気遣いが、施設の大きな信頼に繋がる〜
マニュアル通りの対応だけでなく、「お手洗いは大丈夫ですか?」「足元、お気をつけくださいね」といった、ほんの少しの気遣いが受診者様の安心感と満足度に繋がり、施設の大きな信頼となっていきます。
第2章:部門・院内での業務(スムーズな運営を支える仕事)
【この章でお話しすること】
・健診の裏側を支える、データ管理や事務作業の重要性について
・面倒な作業を「楽に」「ミスなく」こなすための、考え方のヒント
・他の部署や外部業者との連携をスムーズに進める、コミュニケーションのコツ
2-1. データ管理・事務作業:健診業務の「心臓部」
業務内容:各検査で得られた結果数値を、管理用の台帳やPCファイルに一つひとつ正確に転記・入力していく作業。
この記録を元に、受診者様や企業様へお渡しする結果報告書を作成し、発送。
これらのデータを元に、健診の費用を計算して請求書を作成。
関連記事「Excelで作る 健康診断・人間ドック 結果報告書」
POINT:ミスを防ぎ、正確に管理するための基本
・「転記ミス」は、この業務で最も注意すべき点
手作業での入力は、どんなに慣れた人でも、ふとした瞬間に間違いが起こり得る、非常に神経を使う作業です。特に、受診者様の取り違えや、数値の桁間違いは、施設の信頼を揺るがしかねない重大なミスに繋がります。
・基本にして最強の味方、「ダブルチェック」
ミスを防ぐ最も効果的な方法は、やはり「ダブルチェック」です。「一人が入力し、時間を置いてから自分でもう一度見直す」、あるいは「別の人が入力内容を確認する」という一手間が、ミスの発生を劇的に減らしてくれます。単純な方法ですが、これ以上に確実な対策はありません。
・入力する「書式(フォーマット)」を揃えておく
毎回、入力する表のレイアウトが違っていたり、項目の順番がバラバラだったりすると、それだけで見間違いや転記ミスの原因になります。管理用の台帳やファイルは、一度決めた書式に揃えて運用するだけで、作業が格段にスムーズになり、ミスも起こりにくくなります。
2-2. 院内・外部との連携:スムーズな運営のための「報・連・相」
業務内容:院内の放射線科・生理検査科との調整、検体を委託する外部検査センターとのやり取りなど。
POINT:「誰に・何を・いつまでに」を明確にするコツ
「検査を行う専門科への連絡手順」「検体の問い合わせは△△センターの□□さんへ」など、具体的な依頼先と要件を、自分だけでなくチーム全員が分かるように一覧にしておくと、誰が対応しても安心です。
何かを依頼する際は、「いつまでに必要か」という期限を明確に伝えることで、後の「言った・言わない」というトラブルを防ぎます。
第3章:1日の流れ(ワークフロー)で見る健診業務
【この章でお話しすること】
・健診現場が、朝の準備から終業までどのように動いているかの全体像
・自分の担当業務が、全体のどの部分を担い、どう繋がっているのか
モデルケースで解説:「中小規模の健診施設で働くAさん」の1日を追い、業務の流れを時系列で紹介します。
タイムスケジュール例:
【8:30 開院準備】 院内清掃、予約確認、検査機器の立ち上げ
【9:00 受付・検査ピーク】 受付案内、検査補助など外部対応業務が中心
【12:00 午前終了・休憩】 スタッフ間で午前の状況を共有
【14:00 事務作業中心】 データ入力、結果報告書作成など内部運営業務に集中
【17:00 終業準備】 翌日の準備、備品チェック、戸締まり
POINT:あなたの仕事が、チームを支えている
あなたが受付で丁寧に行った確認作業が、次のデータ入力担当者のミスを防ぎます。
自分の仕事が、リレーのバトンのように次の誰かに繋がっていると想像すると、責任感とやりがいが、きっと自然に生まれてきます。
ここでは、仕事をよりスムーズにするための「3つの視点」を、シンプルにご紹介します。
視点①:情報は「チームの財産」と考える
大切な情報は、自分だけのメモにせず、誰もがわかる場所に記録する。
「個人プレー」から「チームプレー」へ、意識を変えるだけでミスは大きく減ります。
視点②:「流れを整える」のも大切な仕事
忙しい時こそ、「どうすればもっと楽になるか?」を考えるチャンスです。
「この時間は電話が鳴りやまないから、〇〇の作業は午後にしよう」と工夫する。
その一つひとつの改善が、未来の自分たちを助けます。
視点③:「大変になってきた」は、改善のサイン
受診者様が増えて仕事が大変になるのは、施設が信頼されている証拠。
それは「もっと良いやり方を見つけるチャンスが来た!」という嬉しいサインです。
まとめ|大切な業務だからこそ、考えたいこと
ここまで、健診業務の全体像と、日々の仕事の流れを一緒に見てきました。
予約の管理から、検査結果の入力、報告書の作成まで、一つひとつの業務が正確さを求められ、まさに「リレーのバトン」のようにつながっていることが、お分かりいただけたかと思います。
そして、こうした大切な業務を、人の手で、間違いなく、毎日続けることの大変さも、同時に感じられたかもしれません。
もし、皆さんが日々向き合っているその「大変さ」を、少しでも「楽」にできるお手伝いができるとしたら。
健診業務には健診システム
健診業務の「大変」を「楽」にしませんか?
日々の予約管理、データ入力、結果作成…健診業務には、ミスが許されない煩雑な作業が多く存在します。
私たちテクノアが提供する健診システム「iD-Heart」は、そんな現場の負担を軽減し、「楽に」「ミスなく」業務を行えるよう、様々な機能でサポートします。