レセプトとは、医療機関が保険者に治療費の約7割を請求する『診療報酬の請求書』です。
病院の窓口で会計をするとき、私たちが払うのはだいたい治療費の3割ほどです(未就学児や70〜74歳は原則2割、75歳以上は原則1割になりますが、ここでは3割で説明します)。残りの約7割は、実はその場で病院がもらっているわけではありません。
病院は、その分を健康保険の運営元である「保険者」に、後からまとめて請求します。この請求書にあたるものが「レセプト」です。
レセプトには、入院・外来・歯科・調剤といった種類があり、どこで受けた医療かによって書類が分かれています。健診システムで扱う請求のように取引先ごとに書式やデータ形式が変わることはなく、種類ごとに決まった型があります。
たとえるなら、買い物の代金の3割だけをその場で払い、残り7割は後日まとめて請求書を送って払ってもらうようなものです。私たちの目には見えませんが、病院の会計の裏側では「3割は即日、残りは後日まとめて」というしくみが、毎月動いています。
このふたつはまったく別の話です。
レセプトの扱い方は、時代とともに変わってきました。もともとは紙に手書きで記入し、束にして提出していました。
その後、紙をやめてデータで扱う「電算化」が進みます。1988年ごろにしくみの構築が始まり、その後段階的に普及していきました(普及の具体的な時期は資料により幅があります)。
それとは別に、そのデータを届ける手段としての「オンライン化」も進みました。2006年に義務化に向けた方針が示され、2024年4月からは原則オンラインでの請求に移行しています。
ここで大事なのは、「データにすること」と「それを送る手段」はまったく別の話だということです。データになっていても、届け方はまた別問題です。
医療機関は、前月分のレセプトを毎月10日までに「支払基金」や「国保連」などの審査支払機関へ提出します。内容に問題がなければ、提出から約2か月後(翌々月の20日以降)に診療報酬が支払われます。
この提出タイミングや支払いのスケジュールは、全国共通のルールとして厳格に定められています。審査支払機関の受付は毎月5日〜10日(※国民健康保険の場合)など一部前後しますが、締め切りはいずれも「10日」で統一されています。
具体的な提出先(窓口)は、被保険者の種類によって以下のように分かれます。
・社会保険(会社員など):社会保険診療報酬支払基金(支払基金)
・国民健康保険(自営業や高齢者など):国民健康保険団体連合会(国保連)
※その他、公費負担医療や生活保護などの受給者の場合は、別途指定の提出先が加わります。
なお、診療報酬の料金体系そのものも全国一律(1点=10円)と定められているため、本屋さんで買う本と同じように、どこで受けても一律の金額になります。そのため、健診システムのように取引先ごとに単価や締め日を確認する手間は、レセプトの世界ではほとんど発生しません。
今はデータとコンピュータでの確認が基本になり、紙の時代より手間は大きく減りました。ただし、コンピュータが得意なのはあくまで「計算」の部分です。
電卓が計算はしてくれても、そもそもの式が正しいかまでは判断してくれません。それと同じように、病名と治療の内容がきちんとかみ合っているかを見極めるのは、今も人の役割です。
たとえば、こんな組み合わせは理由が見えません。
・「かぜ」の診断なのに、ギプスの治療が入っている
・胃薬は出ているのに、胃の病名が書かれていない
・「頭痛」の診断なのに、湿布だけが出ている
・「花粉症」の診断なのに、骨のレントゲンの記録がある
データ化が進んだ今も、この「かみ合っているか」を見る部分は人の目が支えています。
最大の違いは「保険適用(治療)」か「保険適用外(予防・検診)」かです。レセプトは全国一律の型で保険者に請求しますが、健康診断は法律上の治療ではないため保険外となり、会社・組合・自治体・個人など、契約ごとに請求先や負担割合が細かく変動します。
では、健診システムで日々向き合っている請求のバラバラさは、どこから来るのでしょうか。
健康診断はレセプトの対象になりません。健診は「治療」ではなく、病気の有無を調べるためのものだからです。そのため保険の対象外となり、費用の出どころはケース(企業との契約)によってさまざまです。
しかも負担の分かれ方は、健診全体で一律ではありません。たとえば、同じ人の1回の健診でも、検査項目ごとにこんな組み合わせになることがあります。
自治体の補助金が絡む場合もあります。
結果として、1人分の受診でも会社向け・健康保険組合向け・本人向けと、複数の請求書を項目ごとに分けて作らなければならないことがあります。
複数に分かれるのは請求書だけではありません。健診の結果データを届ける先も一つではなく、それぞれ求められる形式や手続きが異なります。
レセプトのようにひとつの型に統一されているわけではない、というのが実情です。
レセプトと健診を並べてみると、その違いがはっきりします。
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レセプト |
健診の請求 |
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|---|---|---|
| 目的 | 治療にかかった費用を保険者に請求すること | 受診にかかった費用を、契約に応じた負担先に請求すること |
| 対象 | 保険が使える治療 | 治療ではない検査 |
| 費用の出どころ | 窓口3割+保険者7割 | 会社・協会けんぽ・健康保険組合・自治体・個人などさまざま |
| 決まった型の有無 | 全国一律の型がある | 一様な型があるとは限らない |
| 実務での向き合い方 | 型が決まっており、確認は自動化しやすい | 取引先ごとに要確認 |
このように健診は、費用を誰が負担するかがケースによって分かれ、レセプトのような全国共通の型はありません。
健診システムで請求まわりの手間を感じるのは、こうした構造が背景にあるようです。項目ごとに負担先が変わり、届け先も複数にわたるからこそ、こうした事情を一つひとつ整理し、抜け漏れなく管理できるしくみを持っておく価値は大きいといえそうです。