本コラムでは、医療機関向け健診システムを提供するテクノアが、健診業務の実務担当者から実際に寄せられる質問をもとに、日々の業務効率化のポイントを整理しました。
健診業務の効率化や現状分析については、お気軽にご相談ください。
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外部委託や段階的なシステム導入など、小規模施設でも実現可能な選択肢を中心に、実務に即した情報をお届けします。
A:
繁忙期で月50〜100件程度の健診を実施している施設でよく聞かれるのが、手書き帳票からExcelへの転記、さらに報告用データへの再入力と、同じ情報を何度も打ち直す作業の負担です。
年間を通じて数百件〜千件程度の規模であっても、健診専任スタッフを配置せず医事課兼任で回している場合、この二重入力が大きな負担になります。
健診システムを導入すると、問診票や測定結果を一度入力するだけで、報告書・請求データ・統計資料などが自動生成される仕組みが整います。このような規模の施設でも、スタッフ1名あたり月10〜15時間の入力時間削減が見込まれるケースがあります。
補足:
導入初期は既存の運用からの切り替えに時間がかかるため、繁忙期を避けて段階的に移行することをお勧めします。
まずは特定健診など報告義務のある項目から電子化を始め、徐々に範囲を広げる方法も有効です。
参考資料:
- 厚生労働省|特定健診・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161103.html
A:
まずは「どの業務で最も時間がかかっているか」「どこでミスが発生しやすいか」を洗い出すことから始めましょう。
多くの小規模施設では、健保や自治体への報告書作成、再検査対象者の抽出、受診券番号の照合などが特に負担になっています。
次に、これらの業務を「紙のまま継続」「Excel効率化」「システム導入」のどれで改善するか優先順位をつけます。
例えば、報告業務だけでもシステム化すれば、月末の残業時間が大幅に削減されることがあります。
システム導入を検討する場合は、段階的な運用開始を前提に、将来すべての健診種別に対応できる製品を選ぶことが重要です。
「今年度は特定健診のみ稼働、来年度から協会けんぽも追加」といった形で、同一システム内で範囲を広げていけば、データの整合性を保ちながら無理なく移行できます。
補足:
Excel管理を当面続ける場合は、入力規則やVLOOKUP関数を活用することで、転記ミスをある程度防ぐことができます。
ただし、複数人での同時編集や履歴管理には限界があるため、中長期的にはシステム化を検討することをお勧めします。
参考資料:
厚生労働省|医療情報システムの導入に関する手引き
https://www.mhlw.go.jp/
日本医師会|健診システム標準化の取り組み
https://www.med.or.jp/
A:
入力ミスの多くは、手書き文字の読み間違い、数値の桁違い、受診者の取り違えなどから発生します。
兼務スタッフで回している施設では、ダブルチェック体制を組むことが困難なため、仕組みで防ぐ工夫が重要です。
手書き帳票(5号用紙など)での対策:
Excel入力での対策:
補足:
健診システムを導入すると、入力時に異常値アラートや過去データとの自動照合が行われ、ミスを即座に検知できます。
ただし、手書き・Excel運用でも上記の工夫により、一定の防止効果は得られます。
参考資料:
- 厚生労働省|特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第3.2版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161103.html
A:
医事課スタッフが外来受付・会計と並行して健診業務を担当する場合、「まとまった時間が取れない」「急な外来対応で作業が中断される」ことが最大の課題です。
このような環境では、中断しても戻りやすい工夫が重要になります。
具体的な工夫:
補足:
健診システムを導入すると、進捗状況が画面上で自動表示され、測定値入力後に判定も自動生成されるため、作業の中断・再開がさらにスムーズになります。ただし、システム導入前でも付箋やチェックリストなど、手軽な工夫で負担は軽減できます。
参考資料:
- 厚生労働省|医療機関における業務効率化の取組事例集
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00010.html
A:
健診結果の保管期間は、健診の種類によって異なります。
労働安全衛生法に基づく定期健診は5年間、特定健診は実施機関で最低5年間の保存が求められます(保険者は無期限保存)。
協会けんぽの生活習慣病予防健診も同様に5年間の保存が必要です。
紙で保管する場合、保管スペースの確保や検索性の低さが課題になります。
限られた人員で管理する小規模施設では、過去データの検索に時間がかかることも負担です。
電子保存の方法:
補足:
電子保存する場合でも、「e-文書法」に基づく要件(真正性・見読性・保存性の確保)を満たす必要があります。
特に、データの改ざん防止やバックアップ体制の整備が求められます。
紙と電子の併用期間を設ける施設も多いです。
参考資料:
- 厚生労働省|医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275.html
- 労働安全衛生法に基づく健康診断結果の記録の保存について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/an-eihou/index.html
A:
小規模施設では健診業務に関わるスタッフが数名のため、担当者の退職や異動時に「前任者しか知らない手順」が引き継げず、業務が止まるリスクがあります。
特に、Excelファイルの参照先や関数の意味、報告書の作成手順などが文書化されていないケースが多く見られます。
属人化を防ぐ具体的な方法:
補足:
健診システムを導入すると、業務フローが画面遷移として標準化され、入力項目や判定基準もシステムに組み込まれているため、前任者のノウハウに依存しにくくなります。
ただし、システム導入の有無にかかわらず、マニュアル化や引き継ぎ期間の確保は不可欠です。
参考資料:
- 厚生労働省|医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275.html
- 厚生労働省|医療機関における業務継続計画(BCP)策定の手引き
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00010.html
A:
ペーパーレス化を進める際は、まず「紙でなければならない書類」と「電子化できる書類」を分けることから始めましょう。
例えば、受診者の同意書や本人確認書類は紙での保管が必要な場合もありますが、健診結果の控えや内部的な進捗管理表、統計資料は電子化しやすい部分です。
段階的な電子化の進め方:
補足:
健診システムを導入すると、PDF出力や検索機能が標準搭載され、より効率的に運用できます。
「今年度分は電子化、過去分は紙のまま保管」など、段階的に範囲を広げる方法が現実的です。
参考資料:
- 厚生労働省|医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275.html
- e-文書法に基づく医療文書の電子保存について
https://www.mhlw.go.jp/
クリニックや小規模病院での健診業務は、限られた人員と時間の中で正確性とスピードの両立が求められる、やりがいと同時に負担の大きい業務です。
本コラムでは、手書き帳票やExcel管理での工夫、ファイル管理の方法、属人化を防ぐマニュアル化など、今すぐ実践できる業務改善のヒントをご紹介しました。
付箋での進捗管理、基準値の明記、スキャン保存といった小さな工夫の積み重ねが、日々の負担軽減につながります。
もちろん、健診システムの導入も選択肢の一つです。ただし、システム導入には時間とコストがかかるため、まずは現在の運用を見直し、「どこで最も時間がかかっているか」「どこでミスが発生しやすいか」を把握することから始めましょう。