この記事では、健診業務の全体像を「スッキリとご理解いただく」ことを目指しています。
① お客様と直接関わる仕事(外部対応業務)
② スムーズな運営を支える仕事(内部運営業務)
③ 1日の流れ
という3つの視点から、仕事内容を一つずつ一緒に見ていきたいと思います。
AIやマニュアルが教えてくれない「よくあるミスの防ぎ方」や「現場で役立つコツ」も具体的にお伝えします。
特別な資格や経験がなくても大丈夫です。
複雑に見える健診業務を整理し、ご自身の役割を理解するための一つの「道しるべ」のようになれば、と願っています。
健診業務に対する不安が少しでも和らぎ、「これなら、できそう」と感じるためのお手伝いができれば幸いです。
本格的な解説に入る前に、まずは健診業務の全体像を見てみましょう。
これらの業務は、お客様と直接関わる「外部対応業務」と、その裏側を支える「内部運営業務」の大きく2つに分けられます。
一つ一つの詳細は後の章でじっくり解説するので、今は「へぇ、こんなに色々な仕事が関わっているんだな」と、全体像を眺めてください。
【外部対応業務】受診者様・企業様と直接関わる仕事
業務名 | 内容 |
契約業務 | 企業や健康保険組合などと、健診コースの内容や料金を取り決める仕事 |
予約管理 | 電話などで予約を受け付け、健診日時を正確に管理・調整 |
事前準備 | 受診者様へ、問診票や検査キットなどの大切なご案内を事前に送付 |
当日の受付・案内 (アテンド) |
来所された受診者様をお迎えし、書類などを確認 着替えや各検査へスムーズにご案内 |
検査の補助・介助 | 身体測定や採血など、医療スタッフと連携して受診者様の検査をサポート |
【内部運営業務】健診運営をスムーズに支える仕事
業務名 | 内容 |
データ入力・管理 | 各検査の結果を、間違いがないよう正確に転記システムへ入力し、情報を管理 |
結果報告書の作成・発 | 受診者様や企業様へお渡しする、健康状態が記された大切な報告書を作成し、発送 |
請求・精算業務 | 実施した健診の費用を計算し、企業様や健康保険組合へ請求 |
院内・外部連携 | 院内の他部署(放射線科など)や、外部の検査会社とスムーズに連携 |
検査の補助・介助 | 身体測定や採血など、医療スタッフと連携して受診者様の検査をサポート |
【この章でお話しすること】
・受診者様や企業の方と接する際の基本的な業務内容について
・お客様に安心感を与え、信頼を得るための具体的なコミュニケーションのヒント
・よくあるクレームやミスを防ぐための考え方
業務内容:電話などでの予約受付、予約変更・キャンセル対応、問診票や検査キットの事前送付など。
POINT:失敗を防ぐためのヒント
電話予約では、お名前や生年月日などの聞き間違いを防ぐための「復唱確認」を必ず行いましょう。
団体の予約を一括で受ける際には、受診者様のお名前や生年月日だけでなく、受診コースの確認も必要です。
事前送付物の入れ間違いは、受診者様の不信感に繋がります。
複数人でのダブルチェックや「送付物チェックリスト」の活用が有効です。
業務内容:受付での本人確認、保険証や持参物のチェック、更衣室や検査室への案内(アテンド)。
POINT:受診者様の不安に寄り添う声かけ
健康診断の受診者様は日頃から医療機関にかからない方も多く、院内で不安を抱かれる方もいらっしゃいます。
「検査、少し緊張しますよね。大丈夫ですよ」といった共感の言葉が、受診者様の心を和らげます。
「次は血圧測定です。すぐに終わりますので、あちらでお待ちください」など、次に何をするか、どのくらいかかるかの見通しを伝えるだけで、受診者様は安心できます。
待ち時間が長引く際は、「お待たせして申し訳ありません」の一言で、受診者様の気持ちは大きく変わります。
業務内容:身体測定(身長・体重など)、視力・聴力検査、採血や採尿のサポート、医師の診察補助。
POINT:自分の役割を正しく知るために
採血行為やレントゲン撮影など、資格が必要な医療行為と、資格がなくてもできる補助業務(準備、介助、ご案内など)の線引きを正しく理解しておくことが極めて重要です。
医療スタッフが検査に集中できるよう、先回りして準備を行うなど、スムーズな連携を心がけましょう。
業務内容:法人契約の内容確認、企業担当者様との日程調整、見積書作成のサポートなど。
POINT:知っておくと安心な豆知識
企業には、従業員に年1回の定期健康診断を受けさせる「義務」があること(労働安全衛生法)を知っておくと、担当者様との会話がスムーズになります。
「なぜ病気の治療より健診のほうが高額なの?」という質問には、「健康保険が適用される治療と異なり、予防目的の健診は原則として保険適用外のためです」と説明できるようにしておきましょう。
【コラム】先輩からのワンポイントアドバイス ①
〜小さな気遣いが、施設の大きな信頼に繋がる〜
マニュアル通りの対応だけでなく、「お手洗いは大丈夫ですか?」「足元、お気をつけくださいね」といった、ほんの少しの気遣いが受診者様の安心感と満足度に繋がり、施設の大きな信頼となっていきます。
【この章でお話しすること】
・健診の裏側を支える、データ管理や事務作業の重要性について
・面倒な作業を「楽に」「ミスなく」こなすための、考え方のヒント
・他の部署や外部業者との連携をスムーズに進める、コミュニケーションのコツ
業務内容:各検査で得られた結果数値を、管理用の台帳やPCファイルに一つひとつ正確に転記・入力していく作業。
この記録を元に、受診者様や企業様へお渡しする結果報告書を作成し、発送。
これらのデータを元に、健診の費用を計算して請求書を作成。
POINT:ミスを防ぎ、正確に管理するための基本
・「転記ミス」は、この業務で最も注意すべき点
手作業での入力は、どんなに慣れた人でも、ふとした瞬間に間違いが起こり得る、非常に神経を使う作業です。特に、受診者様の取り違えや、数値の桁間違いは、施設の信頼を揺るがしかねない重大なミスに繋がります。
・基本にして最強の味方、「ダブルチェック」
ミスを防ぐ最も効果的な方法は、やはり「ダブルチェック」です。「一人が入力し、時間を置いてから自分でもう一度見直す」、あるいは「別の人が入力内容を確認する」という一手間が、ミスの発生を劇的に減らしてくれます。単純な方法ですが、これ以上に確実な対策はありません。
・入力する「書式(フォーマット)」を揃えておく
毎回、入力する表のレイアウトが違っていたり、項目の順番がバラバラだったりすると、それだけで見間違いや転記ミスの原因になります。管理用の台帳やファイルは、一度決めた書式に揃えて運用するだけで、作業が格段にスムーズになり、ミスも起こりにくくなります。
業務内容:院内の放射線科・生理検査科との調整、検体を委託する外部検査センターとのやり取りなど。
POINT:「誰に・何を・いつまでに」を明確にするコツ
「検査を行う専門科への連絡手順」「検体の問い合わせは△△センターの□□さんへ」など、具体的な依頼先と要件を、自分だけでなくチーム全員が分かるように一覧にしておくと、誰が対応しても安心です。
何かを依頼する際は、「いつまでに必要か」という期限を明確に伝えることで、後の「言った・言わない」というトラブルを防ぎます。
【この章でお話しすること】
・健診現場が、朝の準備から終業までどのように動いているかの全体像
・自分の担当業務が、全体のどの部分を担い、どう繋がっているのか
モデルケースで解説:「中小規模の健診施設で働くAさん」の1日を追い、業務の流れを時系列で紹介します。
タイムスケジュール例:
【8:30 開院準備】 院内清掃、予約確認、検査機器の立ち上げ
【9:00 受付・検査ピーク】 受付案内、検査補助など外部対応業務が中心
【12:00 午前終了・休憩】 スタッフ間で午前の状況を共有
【14:00 事務作業中心】 データ入力、結果報告書作成など内部運営業務に集中
【17:00 終業準備】 翌日の準備、備品チェック、戸締まり
POINT:あなたの仕事が、チームを支えている
あなたが受付で丁寧に行った確認作業が、次のデータ入力担当者のミスを防ぎます。
自分の仕事が、リレーのバトンのように次の誰かに繋がっていると想像すると、責任感とやりがいが、きっと自然に生まれてきます。
ここでは、仕事をよりスムーズにするための「3つの視点」を、シンプルにご紹介します。
視点①:情報は「チームの財産」と考える
大切な情報は、自分だけのメモにせず、誰もがわかる場所に記録する。
「個人プレー」から「チームプレー」へ、意識を変えるだけでミスは大きく減ります。
視点②:「流れを整える」のも大切な仕事
忙しい時こそ、「どうすればもっと楽になるか?」を考えるチャンスです。
「この時間は電話が鳴りやまないから、〇〇の作業は午後にしよう」と工夫する。
その一つひとつの改善が、未来の自分たちを助けます。
視点③:「大変になってきた」は、改善のサイン
受診者様が増えて仕事が大変になるのは、施設が信頼されている証拠。
それは「もっと良いやり方を見つけるチャンスが来た!」という嬉しいサインです。
ここまで、健診業務の全体像と、日々の仕事の流れを一緒に見てきました。
予約の管理から、検査結果の入力、報告書の作成まで、一つひとつの業務が正確さを求められ、まさに「リレーのバトン」のようにつながっていることが、お分かりいただけたかと思います。
そして、こうした大切な業務を、人の手で、間違いなく、毎日続けることの大変さも、同時に感じられたかもしれません。
もし、皆さんが日々向き合っているその「大変さ」を、少しでも「楽」にできるお手伝いができるとしたら。