本記事では、2025年9月1日の時点で公開されている資料を基にまとめています。
公開されている資料はこちらのURLから参照可能です。
健診体系の見直しについて(協会けんぽ 富山支部)
協会けんぽの中長期的な取り組みについて(本部運営会資料)
今回の健診体系見直しは、以下の5つの柱で構成されます。
目的
健診の選択肢を拡大し、健康意識の向上と実施率向上を図ります。
対象者・補助額
35歳以上の被保険者が対象
定額25,000円の補助(総額が25,000円未満の場合はその総額)
受診間隔の制限なし
検査項目の拡充
健保連人間ドック健診の基本項目と同一になります。
新たに追加される項目
オプション項目
今後の予定
令和9年度から、被扶養者にも同等の内容で拡充予定です。
背景と目的
就業により生活習慣が変化する若年層への早期介入を図ります。
現在の定期健康診断では一部検査項目の省略が認められており、被扶養者は40歳まで健診機会が限られているためです。
対象の拡大
従来の35歳以上に加え、20歳、25歳、30歳の被保険者も生活習慣病予防健診の対象になります。
検査項目
既存の生活習慣病予防健診から胃・大腸がん検診を除いた項目で実施されます。
今後の予定
令和9年度から被扶養者にも拡充予定です。
導入の背景
健康日本21(第三次)の目標指標に骨粗鬆症検診の受診率が追加されたことを受けて導入されます。
対象者
40歳以上の偶数年齢の女性
実施方法
原則として健診機関内で実施。自施設で実施できない場合は、再委託先の選定・確保が必要です。
目的
家族も含めた加入者全体の健康意識醸成と受診率向上を図ります。
変更内容
令和9年度から、被扶養者健診は被保険者と同等の内容に拡充されます。
重要な変更点
受診勧奨の実施
「胸部X線検査」等で要精密検査・要治療と判断されながら、医療機関への受診が確認できない方に対して受診勧奨を実施します。
先行実施
令和6年度に3支部(北海道・徳島・佐賀)で先行実施中です。
検査項目の追加
令和8年度から、喀痰細胞診が肺がん検診項目として追加されます。
新たな健診体系
令和8年度から、付加健診項目を一般健診と統合し、「節目健診」を新設されます。
人間ドック補助実施機関には、制度の質確保のため以下の条件が求められます。
第三者認証の取得 以下のいずれかの認証取得が必要です:
新規申請機関への配慮 認定に一定期間を要することを考慮し、当面は申請書提出により認定取得に代えることが可能です。
特定保健指導の実施体制
検査・診察の適切性
検査の精度管理
読影・判定体制
専門的知識を有する医師による読影・判定が必要な項目:
ダブルチェック体制
X線画像とマンモグラフィ検査では医師のダブルチェック体制が必要です。
健診後のフォローアップ
結果管理
スタッフ配置
安全・環境管理
ビッグデータ活用
若年期からの健診結果を経年的に保有し、ビッグデータ分析により保健事業を推進します。
健診結果受領・費用決済の効率化
システム仕様書の公開
システムベンダー向けにデータファイル仕様書を公開。
電子申請システム
令和8年1月サービスイン予定
その他の機能充実
参考情報:
• 健診施設機能評価 (日本人間ドック・予防医療学会、日本病院会):
◦ https://www.kinouhyouka.jp/portal/top/
• 優良総合健診施設 (日本総合健診医学会):
◦ https://jhep.jp/jhep/sisetu/nst01.jsp
• 健康保険組合連合会・UAゼンセン人間ドック認定 (全日本病院協会):
◦ https://www.ajha.or.jp/hms/medicalcheckup/
• 労働衛生サービス機能評価 (全国労働衛生団体連合会):
◦ https://www.zeneiren.or.jp/service/
協会けんぽによる今回の健診体系見直しは、単なる制度変更を超えた健康管理の根本的転換を意味しています。
従来の「病気になってから対応する」アプローチから、「若いうちから予防に取り組む」アプローチへ。
35歳以上中心の健診体系から、20代からの継続的な健康管理へ。
この方針転換により、約3,900万人の加入者とその家族が、生涯にわたって健康を維持できる環境が整備されます。
医療機関にとって
第三者認証の取得や保健指導体制の整備など、新たな要件への対応が求められます。
しかし同時に、より包括的な健康サービスを提供する機会でもあります。
システム事業者にとって
医療DXインフラとの連携や新たなデータ仕様への対応が必要となりますが、これは医療業界のデジタル化を推進する重要な契機となるでしょう。
そして加入者にとって
従来よりも早い段階から、より充実した健診を受けられる環境が提供されます。
特に20代からの健診開始と人間ドック補助により、健康への意識と行動が大きく変わることが期待されます。
令和8年度から本格的に開始される280億円規模のこの改革は、日本の予防医療の新たなスタンダードを築く取り組みです。
医療費の適正化という喫緊の課題に対し、「予防に勝る治療なし」という原点に立ち返った、協会けんぽの決断と言えるでしょう。